カルシウム健康教室 1限目「カルシウムの働き」

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動脈硬化とカルシウム

動脈硬化は、もともとゴムのようにやわらかく、必要に応じ伸び縮みして血流量を調節している血管(動脈)が、文字通り硬くなることです。硬くなった動脈の壁を調べると、カルシウムがたまっていることが分かります。動脈の壁が厚くなり、中へ中へとふくらむと血管の内部は細くなり、血液が通らなくなってしまいます。さらに繊維が増えると血管の筋肉が少なくなり、伸び縮みの自由がきかなくなってしまいます。この動脈硬化が心臓の冠状動脈で起こり、新しい血液が送られなくなって心筋が腐る病気が心筋梗塞です。

動脈硬化といえばコレステロールの摂りすぎというのが今までの常識でした。戦後、食糧事情が豊かになり、コレステロールを含めた脂肪やカロリーの摂りすぎ、運動不足のため肥満になる人が増え、精神的なストレスも加わって血清中のコレステロール値の高い人が多くなりましたが、このような人たちの間で、比較的年齢がまだ若いにも関わらず心筋梗塞が多く起こりはじめたのです。

心筋の細胞内にカルシウムが増加したり、その他の電解質の異常が起こるときに心筋細胞が壊死を起こし、カルシウムの分泌をおさえる副甲状腺を取るとカルシウムが細胞の中に入り込まないので壊死も起こりにくくなるということが報告されています。どうも恐ろしい心筋梗塞を起こす動脈硬化の原因にもカルシウムが関係しているようです。

血管の内弾性板を作っているのは、主にエラスチン(弾性素)というゴムのように弾力性のある繊維です。血管の中に入ってきたカルシウムは、年をとるとともにこのエラスチンにたまることが分かっています。カルシウムのたまったエラスチンはゴムが古くなって粘りがなくなるように固くなり、伸び縮みが悪くなります。血管にはたえず血圧が加わりますから、弾力性を失った血管は内弾性板が傷つきやすくなります。高血圧の人では、特にその害が強いといえます。このように弾力性を失ったエラスチンは、血管の防護壁としての力も次第に失い、コレステロールをはね返すこともできなくなるのです。